非常用発電機の点検・修理
停電時にスプリンクラーのポンプや消火栓、非常照明などへ電気を送る設備です。普段はまったく動かないため、いざというときに始動しない事例が繰り返し報告されてきました。点検では実際に運転し、負荷をかけた状態で規定の出力が出るところまで確認します。
現場での呼び方:非常用発電機 / 非常用自家発電設備 / 自家発 / キュービクル式発電設備
点検の義務と頻度
- 根拠
- 消防法第17条の3の3(消防用設備等の非常電源として設置されている場合)
- 点検の頻度
- 機器点検:6か月に1回総合点検:1年に1回(定格出力の30%以上の負荷をかける負荷運転、または内部観察等)予防的な保全策を講じている場合、負荷運転・内部観察等は6年に1回まで延長できます
- 報告
- 特定防火対象物(飲食店・物販店・ホテル・病院など不特定多数が出入りする建物)は1年に1回、非特定防火対象物(事務所・工場・倉庫など)は3年に1回、消防長または消防署長へ報告します。
- 点検する人
- 延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物などは、消防設備士または消防設備点検資格者による点検が必要です。それ以外は関係者による点検も認められていますが、試験器具と報告書の作成が必要になります。
点検の頻度や報告の要否は、建物の用途・規模・収容人員によって変わります。実際の適用は所轄の消防署、または点検業者にご確認ください。
非常用発電機を構成する機器
どの部分が不調なのかを伝えられると、見積もりの精度が上がります。
| 機器 | 役割 |
|---|---|
| 原動機(エンジン) | ディーゼルまたはガスエンジン。発電機を回す |
| 発電機 | 電気を作る。定格出力と電圧を満たす必要がある |
| 始動用蓄電池 | エンジンを始動させる。劣化すると始動不能の直接原因になる |
| 燃料タンク・燃料系統 | 運転に必要な燃料を確保する。軽油の劣化やスラッジが不調の原因になる |
| 冷却水・潤滑油系統 | エンジンの温度と潤滑を保つ |
| 制御盤 | 停電を検知して自動始動させ、運転状態を表示する |
点検で確認する項目
始動
- 自動始動の確認
- 始動時間
- 始動用蓄電池の電圧と液量
- セルモーターの状態
運転
- 定格回転数への到達
- 電圧・周波数・電流
- 排気の色と異音・異臭
- 冷却水温度と油圧
負荷運転
- 定格出力の30%以上の負荷を30分以上かけた運転
- 運転中の各値の安定
- 未燃燃料の排出状況
燃料・油脂
- 燃料の量と劣化
- 潤滑油の量と汚れ
- 冷却水の量と不凍液の濃度
- 各部からの漏れ
予防的保全
- 潤滑油・冷却水・燃料フィルターの交換記録
- 始動用蓄電池の交換記録
- ファンベルトの状態
よくある不具合と対応
| 症状 | 考えられる原因 | 対応 |
|---|---|---|
| 始動しない、または始動に時間がかかる | 始動用蓄電池の劣化が最も多い。次いで燃料系統の詰まり | 蓄電池を交換します。始動不良は最も多い故障で、かつ最も重大です |
| 運転中に黒煙が出る | 長期間の無負荷運転で溜まった未燃燃料(ウェットスタッキング) | 負荷運転で焼き切ります。放置すると出力低下と火災の原因になります |
| 冷却水が減っている | ラジエーターやホースからの漏れ | 漏れ箇所を特定して補修します。オーバーヒートは運転停止に直結します |
| 規定の出力が出ない | 燃料噴射系の不調、インジェクターの劣化、経年による性能低下 | 分解整備(オーバーホール)または更新を検討します |
| 燃料が劣化している | 長期間補給していない軽油の酸化とスラッジ | 燃料の入替と、タンク内の清掃を行います |
交換・更新の目安
点検で不良と判定される前に、計画的に交換したほうが結果的に安く済むことが多い部分です。
| 部位 | 目安 |
|---|---|
| 始動用蓄電池 | おおむね3〜5年。最も交換頻度が高く、始動不良の主因です |
| 冷却水(不凍液) | おおむね2年ごと |
| ファンベルト・冷却水ホース | おおむね5〜6年 |
| 発電設備本体 | おおむね設置後30年前後で更新を検討します。分解整備で延命する選択肢もあります |
記載の年数はメーカーや設置環境によって変わる一般的な目安です。実際の判断は点検結果にもとづきます。
費用が変わる要因
- 発電機の出力(kVA)と台数
- 負荷運転の方法。実負荷、模擬負荷装置(疑似負荷)、内部観察のいずれか
- 模擬負荷装置を使う場合は、装置の搬入経路と設置スペース
- 予防的保全策を講じて負荷運転を6年に1回へ延長するかどうか
- 屋上設置の場合の資材の揚重費用
実際に提示された見積金額から集計した相場は、 費用相場のページで公開しています。
よくある質問
Q. 負荷運転は毎年必要ですか
A. 予防的な保全策(潤滑油・冷却水・燃料フィルター・始動用蓄電池などの計画的な交換)を講じている場合は、負荷運転または内部観察等の間隔を6年に1回まで延長できます。毎年の機器点検は引き続き必要です。
Q. 実負荷と模擬負荷はどちらがよいですか
A. 実負荷は建物の設備を実際に動かすため停電を伴い、影響が大きくなります。模擬負荷装置は建物を止めずに規定の負荷をかけられるため、稼働中の施設ではこちらが選ばれます。
Q. 内部観察とは何ですか
A. エンジンを分解して内部の状態を直接確認する方法です。負荷運転の代替として認められています。
Q. 普段まったく動かしていませんが問題ありますか
A. 無負荷での短時間運転を繰り返すと未燃燃料が溜まり、いざというときに出力が出なくなります。定期的に負荷をかけた運転が必要です。
